Lucas Gracianoライブペインティング実演会

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東京MTGでは7月13日〜16日の4日間、Lucas Graciano先生のアーティストイベントを開催しました!  今回は通常のサインや拡張アート・スケッチだけではなく、Lucas先生が油絵を仕上げていく様子を見られるペインティング実演会も行いました。多くの方にお越しいただき、大盛況となりました!  この記事では、Lucas先生の日本滞在やイベントの様子をお伝えしたいと思います。

家族揃っての来日

Lucas先生が来日したのは、2回目で6年ぶり。今回は奥さんと娘さんと、3人での来日となりました。Lucas先生のご家族とは、イベント前に近場の観光地を散策したり、イベント期間中にランチやディナーを共にしたりしました。

一緒に過ごしている間に、奥さんから「写真お願いします」、娘さんから「トイレどこですか?」など、日本語で聞かれた時にはびっくりしました。奥さんと娘さんは、スマホのアプリなどを利用して、日本語を勉強しているそうです。娘さんはお箸の使い方もトレーニング中らしく、ミニオンの可愛らしい補助器具を持っていました。日本滞在中にお箸をたくさん使ったことですぐに上達し、ミニオンなしでも上手に使えるようになっていました! その土地に住むわけではなくとも、関心を持って言語や文化を学んでみる姿勢が素敵だな、と感じました。私も海外によく行くので、英語だけで乗り切ろうとせず、現地の言語や文化を学ぶ姿勢を大切にしたい、と改めて思いました。

活気にあふれたペインティング実演会

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15日に開催されたペインティング実演会には、多くの方にお越しいただき、活気のあるイベントとなりました。絵を描き始める前に、Lucas先生から自己紹介と、これまでの活動や作品についてのお話がありました。

いよいよペインティング実演会が始まると、Lucas先生はキャンバスに油絵の具で色を付けながら、説明を加えていきました。参加者の方からも多くの質問が飛び出し、Lucas先生の絵の描き方やワークスタイル、画材などについても知ることができました。質疑応答の一部をここで紹介したいと思います。

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Q:1日にどれくらい絵を描きますか?
A:長くても6時間くらいだね。それ以上は精神的に疲れて集中できなくなるから、それが限度かな。

Q:絵を描く時に、どの部分から描き始めますか?
A:その時の気分にもよるけど、その絵の中心となる大事な部分から描くことが多いね。締め切りの問題もあって、時間がなくなってきた時に大事な部分が描けてないと大変だから(笑)

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恐ろしい形相をした「墓所のタイタン」の似顔絵です。たった2時間という短い間に仕上げたとは思えません。「墓所のタイタン」の原画と比べると分かるのですが、少し暖色系よりの色使いになっています。

ここからは、絵画の分析をブライアンさんに書いてもらおうと思います! 

優子さん、ありがとうございました!

最近東京MTGに仲間入りした原画は、Lucas先生のマジック:ザ・ギャザリングにおける初期の作品であり、今回のペインティング実演会のテーマでもあったプロモ版「墓所のタイタン」です。ここでは、オリジナルの作品の制作過程にも触れながら、両作品について書きたいと思います。

Lucas先生のマジックアートのデビュー作は、コアセット2011の「夜翼の影」と「大地の召使い」の2作品でした。

Lucas先生のマジックアートのデビュー作は、コアセット2011の「夜翼の影」と「大地の召使い」の2作品でした。

そして彼への3つ目の作品依頼が、Duels of The Planeswalkers のプロモ「墓所のタイタン」でした。タイタン・サイクルは、マジック界に大きな衝撃を与えました。当時、私はスタンダードをプレイしていましたが、皆デッキにタイタンを入れていて、私のお気に入りはこの「墓所のタイタン」でした。

クレジット表記が間違ってされてしまいましたが、プロモの「墓所のタイタン」はLucas Graciano氏(左)によって描かれ、M11のバージョンはNils Hamm氏(右)によって描かれました。

クレジット表記が間違ってされてしまいましたが、プロモの「墓所のタイタン」はLucas Graciano氏(左)によって描かれ、M11のバージョンはNils Hamm氏(右)によって描かれました。

ウィザーズ・オブ・ザ・コーストがアーティストに伝えた「墓所のタイタン」のアート説明資料 を見てみましょう(記事は英語です)。

“このタイタンは死と闇の象徴。彼は巨大(身長約8m)で筋肉隆々、黒い金属の鎧(しかし肋骨と腹部は覆われていない)とギザギザした大鎌で武装し、人間を腹からぶら下げた、人とは似て非なる頭蓋を持っている ― ちっぽけな人間から見てはとてつもなく恐ろしい光景だ。彼の胸腔を満たす多くの死体は、彼が動くたびに少しずつ肋骨の隙間からこぼれ落ちる…それはアンデッドの軍隊だ。”

「墓所のタイタン」(Lucas Graciano氏、油彩画)※現在、東京MTGに展示中

「墓所のタイタン」(Lucas Graciano氏、油彩画)※現在、東京MTGに展示中

Lucas先生は、この作品をトーナル画として描きました。トーナル画とは、作品に使う色数を限定して抑え、明度の差を使って明暗を表現する手法です。アート説明資料にあったように、この作品では、タイタンからこぼれ落ちたアンデッドの軍隊が結成され始めているのが見えます。彼の胸郭からは依然として大量のゾンビがあふれ出ていて、このカードのゾンビを次々に生成するという能力をよく表しています。この作品ではタイタンが画面の大半を占めており、アート説明資料にあった大鎌がこの絵の焦点である胸部を上手く囲い込んでいます。

私はLucas先生に、この作品の途中経過を取った写真は無いかと聞いてみると、下記に載せた鉛筆書きの絵を見つけて画像を送ってくれました。私はこの2枚のスケッチの両方の要素が、最終的な作品に生かされていることに気が付きました。肩当ては1つ目のスケッチから、そして大鎌は2つ目から来ています。キャラクターのポーズと、はっきりとは見えない不吉な顔は、初期のコンセプト段階からずっとあったのだと分かりました。

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墓所のタイタンの初期スケッチ(鉛筆)

墓所のタイタンの初期スケッチ(鉛筆)

カードの「墓所のタイタン」の絵と比べると、今回のこの絵では胸より上のクローズアップした肖像画のようになっています。以前の作品では、タイタンの能力を象徴するようなゾンビがあふれ出す胸郭が絵の焦点だったのに対して、この作品ではタイタンの顔が焦点です。顔の細部を曖昧にしていた影が無くなり、こちらではタイタンの不気味な形相をはっきりと見ることができます。頭部周辺では首や眼窩が赤く輝いています。オリジナルの表情が見えない不吉なタイタンと、おぞましい形相がはっきりと見える似顔絵のタイタン、どちらがより恐ろしいかは言えないことでしょう。

「墓所のタイタン」(Lucas Graciano氏、油彩画)

「墓所のタイタン」(Lucas Graciano氏、油彩画)

「墓所のタイタン」はとても色数を抑えており、ベースカラーとして暗褐色、そしてカドミウムレッドや黄土色などを使って、黒や白で明度を変えながら肌の色合いや影を表現しています。今回の作品もかなり似た色彩を使っていますが、色の明度や純度が上がったことが分かります。濁色を使う代わりに、こちらでは赤と黄色を混ぜたバリエーションを使っており、赤や黄色そのものがこの作品では見られます。背景の黄色は、タイタンの頭部周りを明るくして目立たせる効果があります。そして首や胸部の赤色は陰影を創り出し、タイタンの恐ろしさを引き立てています。

暗褐色の色変化を示した図表をネット上で見つけたので、下に載せます。

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私はこのことについて、Lucas先生に直接質問までしました。

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(英文の翻訳)
どんな色を使われたんですか? 経験から言うと、暗褐色のように見えますが。
よく分かりましたね。私はこの絵を暗褐色の“下塗り”から始めたと思います。それからは4色くらいの、とても少ない色数しか使いませんでした。カドミウムレッド、黄土色、黒、そして白です。

とても興味深いですよね。

“タイタン”という言葉の別の定義は、“何かを成し遂げた偉大な者” です。アーティストとして、初期に描いた作品が有名で人気のあるカードのもので、プロモになるということはすごいことです。マジック:ザ・ギャザリングのアートショーに携わって10年になりますが、Lucas Graciano氏は彼自身がタイタン(巨匠)として傑出していると思います。まだ東京MTGにある原画を見たことがないのであれば、ぜひ見てみることをお勧めします。「墓所のタイタン」は、何千もあるマジックアートの作品の中で、毎年刊行されるファンタジーアート誌『Spectrum』に掲載された数少ない作品です。そこには彼の言葉でこう記してあります。

“これはマジック:ザ・ギャザリングの3つ目の委託作品でした。私の初めての2枚のカードは、M11のコモンでした。キャリアの初期に「墓所のタイタン」を描けたことはとても光栄でした。しかしながら正直に言って、マジックについてほとんど知りませんでしたし、カードがどれくらいの大きさなのかも知りませんでした。でも今日までで、「墓所のタイタン」は私がマジックのために手掛けた作品の中でもお気に入りの1つです。”