絵画の分析 ~ 『統率者(2019年版)』カードプレビュー編 ~

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Sean Sevestre氏は2016年、『イニストラードを覆う影』のセットの「恐怖の目覚め/絶え間ない悪夢」のイラストでマジックアーティストとしてデビューしました。カードサイズに切り取られることでアート作品が本来の良さを失ってしまうことがあり、アーティストが表現しようとしたことがカードからは読み取れないことが時折あります。この作品もそのうちの1つだと言えるでしょう。ここでは真夜中に目が覚めてしまった女性が描かれています。ベッド横のナイトテーブルの上にはボトルが数本置いてあり、子供のようなゴーストが鋭くとがった指で女性を指しています。前述のカードサイズの問題で今まで気付かなかったのですが、ゴーストのオーラの一部がボトルから出てきているようです。この女性は霊だけでなくお酒にも取り憑かれているのかもしれません。絵全体にわたるラフな筆遣いが、恐ろしい悪夢から目覚めたばかりの感覚を良く表していると思います。

恐怖の目覚め (Sean Sevestre氏、デジタル

恐怖の目覚め (Sean Sevestre氏、デジタル

このストーリーは、カードの裏面である「絶え間ない悪夢」に続きます。女性はベッドから出て起きたので、シーンを詳細に見ることができます。モノクロで描かれていることで、まだ夜中だということが分かります。ここでははっきりとゴーストが子供であることが分かり、彼女の上を漂っていた時と同じくらい不気味です。ナイフを手にし彼女についていく様子は恐ろしく、この霊が良くないものだということは疑う余地がありません。対戦相手に対して何度も使えるというこのカードの能力のように、この女性もまたカードの両面において悪霊に取り憑かれ続けているのです。この作品の私のお気に入りは、窓から差し込む光とその影で、これにより見る人はこの空間が先ほどと同じ場所であることが分かります。しかし視点が水平方向に反転しています。

絶え間ない悪夢(Sean Sevestre氏、デジタル)

絶え間ない悪夢(Sean Sevestre氏、デジタル)

Sean Sevestre氏の次のカードは『カラデシュ』セットの「洗練された鍛刃士」です。カラデシュのエルフは、自然からインスピレーションを受けて物づくりをします。ここでは2人の工匠エルフが描かれており、彼らは明らかに武器を振りかざしていますが、誰かが誰かに襲い掛かっているというようには見えません。

私はこの作品の色使いとスタイルがとても好きです。Sean Sevestre氏の前の作品は、とてもモノクロ調で青色が主でした。「洗練された鍛刃士」は、ラフな筆遣いがひときわ目立ちます。これは伝統的な絵画のインパスト(厚塗り)の技法にとても似ており、質感や筆致が見て取れます。この作品はデジタルで描かれているので、こういった質感はすべてアーティストが意図的に加えたものです。それは特に大胆な質感で描かれた背景に見て取れます。背景とは対照的に、メインのエルフたちは細部まで描かれ、人物が際立つようになっています。2人のエルフ周辺の緑とは対照的な赤い部分が見る人の視線を惹きつけ、クリーチャーとしてのエルフたちを目立たせています。

洗練された鍛刃士(Sean Sevestre氏、デジタル)

洗練された鍛刃士(Sean Sevestre氏、デジタル)

Sean Sevestre氏はその後3年間、マジックのアート作品はありませんでした。だからこそ、今回の彼の新しい作品である、東京MTGの『統率者(2019年版)』のプレビューカードである「サリアの霊呼び」を紹介できることにとてもワクワクしています!

 
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Sean Sevestre氏はここでも人間の形をしたキャラクターを描いていますが、以前の作品とは異なる手法で描かれています。今回の作品もだいぶ青味が強いですが、「恐怖の目覚め/絶え間ない悪夢」よりも多くの色が使われています。しかし、「洗練された鍛刃士」の赤や緑ほど目を引くものではありません。とはいうものの、彼のこれまでの作品には共通点もあります。「絶え間ない悪夢」の子供、「洗練された鍛刃士」の後ろにいるエルフ、「サリアの霊呼び」全てが見る人を見つめているのです。アイコンタクトは、カードのクリーチャーと見る人との繋がりを生むので重要です。

彼の他の作品と同様にこの人物は武器を持っていますが、このシーンに危険は感じられません。差し迫った攻撃性はないのです。そうはいっても、この人物が強そうなことは明らかですし、手に持った武器がこのクリーチャーのパワーを3まで押し上げています。この作品でも、霊のような表現が使われているのが分かります。「恐怖の目覚め」では主要人物の後ろに浮かんでいたのに似ていますが、前の作品ほどはっきりとした明るい青色ではなく、それは威嚇的ではありません。それはサリアの霊呼びが、スピリット・クリーチャー・トークンを生成するという能力を表しているのです。

もし、Sean Sevestre氏の他の作品にも興味があれば、こちらで見ることができます(サイトは英語です)。また、絵を描くプロセスに関する動画や、ユーモラスな動画を見ることのできるYouTubeのチャンネルもあります。私は彼の新しい作品を見ることを楽しみにしていますし、もちろん、統率者2019年版に収録される他のカードを見るのも楽しみです!