絵画の分析:灯争大戦

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人それぞれ、アートにも好みのタイプがあると思います。写実的なアートが好きな人もいれば、抽象的で非具象的なアートを好む人もいるでしょう。私たちがアートを楽しむ時、色彩や主題、構成などがすべて関わってきます。

昨年、オークションを成功させるために、「ラヴニカの献身」からの作品をいくつか取り上げて、アート愛好家である私の目から見た分析はとても上手くいきました(投稿は英語です)。私が何を言っているか理解しやすくするために、作品の上に線を書き加えてあります。とても面白かったので、灯争大戦の作品でもやってみることにしてみました。

ビビアンのアーク弓( Zack Stella 氏、デジタル)

ビビアンのアーク弓(Zack Stella氏、デジタル)

この作品が初めてプレビューで公開されたとき、Zack Stella氏は多くの称賛を受けました。この真に美しい作品には、とても多くの要素が詰まっています。人物の周りの円は、彼女が動物の魂を操ることができることを表しており、拳銃のリボルバーのように見えます。しかし私のお気に入りポイントは、落ち着いた人物の様子と絵画の構成です。この作品で、ビビアンは本領を発揮しています。

この作品は横のラインで言うと、矢とビビアンの腕によって創り出された線で、構成要素が切り分けられます。作品を見る人の目を、この辺りに留まらせるためにこの技法が使われています。そしてこの作品は、弓の右側の暗い部分、ビビアンの周りのスペース、そしてビビアン自身、という3つのパートに分割されます。ビビアンの背景があまり鮮明ではないことに気が付きましたか? それは、ここで一番重要なビビアン本人を見るときに、背景が邪魔にならないようにしているのです。

絵の中の線は、それがはっきりしたものでも曖昧なものでも、作品を見る人の目の動きに影響します。線と構成は互いに作用しあって、見る人の視線を作品の焦点に導き、そこにずっと留まらせることはしません。ビビアンがこの作品の焦点であり、その他の構成要素は、彼女の周りに視線を集めます。この視線の流れに乗ると、背景の円とビビアンを取り巻く後光のような光に目を奪われます。作品の右側では矢がとても目立っていて、その明るさは見る人の視線を焦点に導きます。もし作品を左側から見始めた場合、ビビアンの腕が視線を彼女の周りの円に導きます。下から見始めた場合は、はためく彼女のマントが視線をビビアンに誘導します。

ビビアンについていえば、彼女が重要であるということを示すために、他の構成要素が大きく貢献しています。弓の内側の後光のような光はとても目立ち、見る人の目を引きます。加えて、ビビアンの衣装の至る所にちりばめられた緑の円の要素は、円がこの作品の構成要素としていかに重要かを強調しています。

終局の始まり( Noah Bradley 氏、キャンバスへの油彩画)

終局の始まり(Noah Bradley氏、キャンバスへの油彩画)

「終局の始まり」は、灯争大戦のストーリーの重要な瞬間の1つを描いており、ボーラスの計画の様々な要素が集結する様子が見られます。アンデッドの軍隊 ”戦慄衆” を指揮するリリアナ、その軍隊をラヴニカに連れてきた次元の門、古呪でプレインズウォーカーから灯争奪うために彼らを捕える不滅の太陽。様々な要素がありますが、この作品の焦点は多くのものに囲まれて中心にいるボーラスです。

「ビビアンのアーク弓」とは異なり、この作品の焦点は左右に偏っておらず、構成要素は絵のど真ん中に視線を導きます。作品の上部にある丸い形の不滅の太陽、そしてボーラスとリリアナが、見る人の視線を作品の中心に留まらせます。雲や戦慄衆などの他の構成要素が生み出す線は、ボーラスを際立たせる働きをしています。

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造反者潰し( Mike Bierek 氏、デジタル)

造反者潰し(Mike Bierek氏、デジタル)

ボーラスの永遠衆が、盾魔導士テヨに襲い掛かっている場面の作品です。かなり緊迫した場面が、とても近くから描かれている構図です。2人の顔が画面の大部分を占め、冷徹で無表情な永遠衆と、それとは対照的な感情にあふれるテヨの顔を細部まで見ることができます。

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作品の構成要素が枠となって、テヨを囲んでいるのが分かるかと思います。彼が押し付けられている壁、下部のナイフ、そして永遠衆の顔、すべてが作用してテヨの顔に焦点が当たるようになっています。

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この作品の焦点は、2人の顔の間の緊迫した空気感です(両矢印で示した部分)。図示した線の全てが、この焦点に視線を導くことがお分かりいただけるでしょう。

魂の占者( Randy Vargas 氏、デジタル)

魂の占者(Randy Vargas氏、デジタル)

こちらのRandy Vargas氏の作品でも、同様のシチュエーションで、プレインズウォーカーの接近戦が描かれています。灯争を永遠衆によって奪われるドムリ・ラーデの最期の瞬間です。「造反者潰し」とは異なり、この作品のカードはクリーチャー呪文なので、そのために永遠衆がより大きく描かれています。そうはいっても、この作品はクリーチャーではないカードになることもできたのではないかと思います。

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この作品の焦点は、「造反者潰し」と同様に、プレインズウォーカーと永遠衆がにらみ合っているところです。作品のすべての動きは、2人がにらみ合っているこのポイントに導きます(両矢印で示した部分)。当惑するドムリが瞬きもしない永遠衆の顔を見つめているところが、この作品の焦点なのです。

悪への引き渡し( Seb Mckinnon 氏、デジタル)

悪への引き渡し(Seb Mckinnon氏、デジタル)

すべてのセットに対して、初期のマジックアートのような抽象的な作品を求める声はあります。ここ数年で、Seb Mckinnon氏は写実的すぎない絵を描くアーティストとして知られるようになりました。ここでは、もちろんボーラスが作品の焦点で、彼の顔の周りにある真っ黒な空間によって非常に強調されています。

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この作品は、渦巻いている背景や都市の景観、そして人物など様々な要素が詰まっているので、少しごちゃごちゃした印象を受けるかもしれません。しかし、このような配置や構成が、この作品を物語本の挿絵のような雰囲気にしているのだと、私は思います。Seb Mckinnon氏はこれら全ての要素を上手く使って、見る人の視線を中心の焦点に誘導するようにしたのです。渦巻く星の背景、首を垂れるゲートウォッチ、都市の景観、これらがボーラスの頭周辺の不吉な暗い空間に導いています。

ナヒリの石刃( Micah Epstein 氏、デジタル)

ナヒリの石刃(Micah Epstein氏、デジタル)

灯争大戦の小説版では、ラヴニカでのナヒリとソリンの戦いはあまり具体的に書かれませんでしたが、カードの絵からはしっかりと戦いの様子が分かります。Micah Epstein氏は、2人のプレインズウォーカーの熾烈な戦いを、壮大なスケールで見事に描きました。

ここには多くのものが描かれていますが、背景の要素がうまい具合にナヒリを囲い込んでいます。重要なところに目が行くように工夫されているのです。後方に見えるソリンが少し気になるかもしれませんが、色味が抑えられていることで悪目立ちすることはなく、実際はナヒリを囲む要素の一部になっているのです。

この呪文は、ナヒリの腕から出る刃を表していますし、それが見る人の目に一番に飛び込んでくるというのは当たり前でしょう。絵の構成要素が作る線(青い線で示した部分)が、それらに視線を集めるのです。

私の個人的なお気に入りは、彼女の目です。刃に囲まれており、目もまた刃と同じ色をしていて目立つので、見る人の視線をナヒリに誘導するのです。

狼の友、トルシミール( Ryan Pancoast 氏、キャンバスへの油彩画)

狼の友、トルシミール(Ryan Pancoast氏、キャンバスへの油彩画)

私は伝説のカードが好きなので、この作品で結びにしたいと思います。トルシミールは最初のラヴニカセットの時に登場して以来、あまりこれまでに触れられてきませんでしたが、忘れられてはいなかったのです。この作品は、プレインズウォーカーではない有名キャラクターの1人が戦慄衆と戦っている場面を描いており、敵の大群のスケールを非常にうまく表現しています。トルシミール対、数え切れないほどのアンデッドの軍隊、という構図です。

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この絵は3つの大きなセクションに分かれます。戦慄衆の軍隊、トルシミール、そして彼の信頼する友ヴォジャです。ヴォジャはとても目立ちますが、これはトルシミールの伝説のカードなので、彼が前景に描かれています。彼らが友として協力し合って戦っている様子が、私はとても好きです。

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もちろん、この作品の焦点はトルシミールです。トルシミールのマントや腕の線が、視線をトルシミールに引き戻し、ヴォジャの装具さえも視線を焦点に導くのです。戦慄衆の視線も、トルシミールとヴォジャに向かっています。

この作品での私のお気に入りは、左下部分です。ヴォジャは明らかに攻撃姿勢なのですが、トルシミールは落ち着きはらっているように見えます。でもよくよく見てみると、破壊された戦慄衆は彼の会心の一撃によるものだと気づきます。

灯争大戦の全ての作品でこのような分析ができたらいいのですが、それには数が多すぎます。この記事が皆さんにとって「なぜこの作品が他の作品よりも好きなのか」、「なぜ作品のある部分を集中して見てしまうのか」という疑問を解消する助けになっていれば幸いです。あなたのお気に入りの作品は取り上げられていましたか? 私の分析に賛成ですか、反対ですか? ツイッターで教えてください。この対話をぜひツイッターで続けたいと思いますし、これからも新しい作品が出次第、分析をしていきたいと思います。