適正な市場価格とは

2017年、レオナルド・ダ・ヴィンチによって描かれた『サルバトール・ムンディ』が、4億5000万ドル超えで落札され、美術品の落札価格として史上最高額となりました。2018年には、パブロ・ピカソの『花かごを持つ少女』が1億1500万ドルで。そして先月、ジェフ・クーンズの『ラビット』が9100万ドルで落札され、存命のアーティストの作品としては史上最高額となりました。これら3つの作品は、イギリスのクリスティーズのオークションハウスで売却されました。これらのオークションは注目を集め、その落札額は美術作品の価格や美術品市場に対する人々の見方を歪めてしまいます。全ての美術作品が、こんなにも高額なのでしょうか? クリスティーズだけが、このような作品を売っているのでしょうか? 実際は、ほとんどの美術作品はこれほどまでの額にはならず、作品を購入する方法は世界中に無数にあるのです。

マジックのアート作品は、『サルバトール・ムンディ』とは違って、多くの作品は5000ドルを超えませんが、昨年、ある作品が高額で取引されました。一年前、「電結の荒廃者」が4万5200ドルで売られ注目を集めましたが、数か月後には「Shahrazad」がその記録を破り、7万2000ドルで売却されました。そして先月、灯争大戦のMythic Editionからの2作品が、3万ドル超えで売られました。

Shahrazad ( Kaja Foglio 氏)

Shahrazad (Kaja Foglio氏)

龍神、ニコル・ボーラス( Matt Stewart 氏 )

龍神、ニコル・ボーラス(Matt Stewart氏 )

精霊龍、ウギン( Chris Rahn 氏)

精霊龍、ウギン(Chris Rahn氏)

全てのマジックのアート作品が、こんなにも高額なのでしょうか? いいえ、とんでもないです。いくつかの高額な取引は注目を集めますが、その入札者は平均して少数ですし、ただ取引を見ているだけの人も多いです。詳しく見てみると、驚くほど高額な取引は数が少ないことが分かります。

なぜ7万2000ドルもする作品があったり、他の作品は1000ドル以下だったりするのでしょうか。どれもマジックアートですが、価格が高いか安いかはいくつかの要素によって決まります。まず、アートの市場は需要と供給だけでは決まりません。あなたが10点の作品を売りに出し、1つは高値がついても残り9つはそれほど値が付かないということがあり得ます。しばしば、アート作品の価格はコレクターの思い入れの強さや、彼らがどれくらい支払っても良いと思うかに影響されます。

私は、VorthosMikeとマジックアートコミュニティに属する人々と、アート作品の価格について話す機会がありました。その様子はこちらで読むことができます(記事は英語です)。話し合いで出た結論の一つは、コレクターはいくつかの要素によって作品の価値を決めている、ということです。具体的に言うと、作品の古さ、カードの人気度、アーティスト、作品に描かれているキャラクターや主題、いかに詳細に描かれているか、などがその要素です。作品にどれくらいの値段が付くかは予測不可能ですが、これまでに売れた作品がなぜその額で売れたのかを知ることは、役に立ちます。

もしあなたが、旧ミラディンブロックでプレイしたことがあるならば、「電結の荒廃者」のカードを間違いなく覚えているでしょう。それは当時とても強力なカードで、現在でも強いカードです。当時は親和デッキの必需品カードでした。2018年にCarl Critchlow氏の原画が、FacebookのMTG Art Marketのグループでオークションに出され、4万5200ドルの高値が付きました。それ以前は、一般向けに売りに出されたマジックのアート作品の最高額は、Ebayで出品されたTerese Nielsen氏の「意志の力」で、2万1319ドルでした。

電結の荒廃者( Carl Critchlow 氏)

電結の荒廃者(Carl Critchlow氏)

意志の力( Terese Nielsen 氏)

意志の力(Terese Nielsen氏)

私が知る限りでは、「Shahrazad」が「電結の荒廃者」の記録を破って7万2000ドルで売れたのが、一般向けに公開された取引ではマジックアート作品の最高額です。「Shahrazad」はHeritage Auctionsのウェブサイトで売りに出されました。このサイトは、スポーツやコミックの記念品などが出品される世界でも有数のオークションで、最近はマジックのアート作品をみつけることもできます。「Shahrazad」の作品はKaja Foglio氏によって描かれたもので、1993年に出たマジックの最初のエキスパンションArabian Nightsに収録されています。初期のマジックのアート作品が売りに出されるのは非常に稀で、そのことが落札額を高額にした大きな要因だと言えるでしょう。このオークションの後、いくつかの古いアート作品が流通市場に出回りましたが、「Shahrazad」ほどの高額には達しませんでした。Ebayには、Mark Tedin氏の「魔力激突」のように数か月に渡りサイト上にアップされている作品もいくつかありますし、マジックの原画をEbayで検索すれば、もっとみつけることができるでしょう。先日、アルファ版「Black Lotus」と「Mox Emerald」が、650万ドルと75万ドルでそれぞれ売りに出されましたが、買い手は出てきませんでした。

魔力激突( Mark Tedin 氏)

魔力激突(Mark Tedin氏)

まだ発売されて間もない灯争大戦のMythic Editionでは、8つの委託された絵画のうち2つ ――「精霊龍、ウギン」と「龍神、ニコル・ボーラス」が伝統的な技法で描かれました。Chris Rahn氏の「精霊龍、ウギン」は、彼によってEbayに出品され3万5600ドルで売られました。「龍神、ニコル・ボーラス」は、VorthosMikeがアーティストに代わってFacebookのMTG Art Marketグループに出品し、3万5000ドルで売られました。

アーティストのMatthew Stewart氏。彼の作品の「龍神、ニコル・ボーラス」とともに

アーティストのMatthew Stewart氏。彼の作品の「龍神、ニコル・ボーラス」とともに

なぜこれらの作品はこれほどまでに高額になったのでしょうか? 前にも述べたように、それには3つの理由があります。キャラクター、カードの強さ、そしてアーティストです。この2つの絵画は、とても有名で人気のあるキャラクターなので、それは大きい要素でしょう。以前の記事で述べたように、名前の付いたキャラクターは親しみを感じやすいのです。「精霊龍、ウギン」は競技マジックで使われますし、そのカードにある力強いイラストでより人気が出ています。それに加え、Chris Rahn氏はとても人気のあるマジックアーティストなので、彼の作品にはより多くの注目が集まります。一方の「龍神、ニコル・ボーラス」は、マジック:ザ・ギャザリングの歴史の中で一番古く人気のあるキャラクターを描いた作品です。ニコル・ボーラスを描いた作品は、それだけでプレミアがつくようなもので、カード印刷用の絵がデジタルで加工された「最古再誕」の原画でさえ、東京MTGのオーナーであるHeiko Schmidtに7200ドルで売られました。Matthew Stewart氏は優れたマジックアーティストであり、「龍神、ニコル・ボーラス」はMythic Editionであるということもありますが、この作品がニコル・ボーラスを描いた手描きの作品だということが、作品の価値を上げた一番の理由だと言えるでしょう。

最古再誕( Jenn Ravenna 氏)

最古再誕(Jenn Ravenna氏)

アート作品がいくらになるかや、いつどのように売りに出されるかは予測がつかないものです。2人の熱狂的なコレクターさえいれば、オークションでアート作品が高額に跳ね上がることはあるのです。ある程度の知識があれば、値段の予測を立てることはできますが、私自身、作品を安く売りすぎたこともありますし、予想以上に高値が付いたこともあります。私はマジックアートの市場をよく見ていますし、マジックアートのコミュニティに出てくる作品に非常に関心を持っています。この私でも、作品の値段について驚くようなことがあるのだから、新しくこの業界に入ってきた人にとっては、マジックアートの市場はとても理解しづらいものだと思います。もしアート関係の質問があれば、ぜひ東京MTGにお問い合わせください。私や東京MTGのスタッフは喜んでアートのお話をしますし、皆さんの疑問にお答えしたいと思います。もし、すぐにお答えできない場合も、皆さんのお力になれるよう最善を尽くします。ぜひマジックアートの世界を覗いてみてください。